万物生々③
しかし人の働きは、金銭によってねうちをつけられるようなものではない。又働きの時間や分量によって、いくらいくらと計算されるようなものでもない。働く人の心―喜んでいるか、いやいやながら時間をつぶしているか、まことを傾けて一心に働いているか、千差万別である。
これをはかりにかけて一々計算したならば、一律の報酬では不公平極まるものとなるであろう。これはいったいどうなるだろうか。一見不合理のようではあるが、長い目で見ていると、まことの働きによらずに得た金銭は、不時の入費の為に飛んでしまう。あるいは又、金銭のためにかえって苦しむということになる。金がある為に不幸になるのである。だから「金銭はその人の働きに応じて、自然にめぐまれるもの」というこが、わが民族の総合体験であり、我等が会得した人倫の哲理である。