私もそろそろ帰らなければならない。
「会長、すみません。仕事がありますのでとりあえず今日は帰ります。」
「そう!?わかった。じゃあまた今度ね。」
「はい、では失礼します。」
と言って私は高級椅子から立ち上がった。
その時、立ち上がりの楽さに気が付いた。
シートの高さとクッションの弾力のバランが抜群にいいのだ。
やはり高級なだけはある。こういうさりげない部分が安物椅子と違うところだ。
でも修理には費用が掛かりそうだ。まず、座席の本革部分が破けたら張替えは出来るのだろうか。出来るにしてもこれと同じ皮革は手に入るのだろうか。手に入っても高そうだ。
「う~ん。」
と言いながら椅子を眺めている私を見て会長は言った。
「先生!何、何を見てるの?」
その言葉にハッとして我に戻った。
「あ、いえいえ、・・・この椅子すごく座り心地がよかったら、つい見とれてしまって。」
「ははは、なんだ、そんなことか。」
と軽く笑った後に、何かを思い出したように続けた。
「あ、先生、ちょっと待ってて!」
「あ、はい。」
会長は部屋を出て行った。
しばらくして何か大きなビニール袋をもって帰ってきた。
「先生、これ持って帰って!」
「なんですか?」
「今朝捕れたシラスだよ。」
といってスーパーのレジ袋いっぱいのシラスをお土産にくれた。
見てびっくり。とても新鮮そうでおいしそうなシラスがいっぱい!
私は思わず叫んだ。
「うあー!すごい!おいしそう!ありがとうございます。」
取材は出来なかったが、高級椅子に座ることが出来、しかも大量の新鮮なシラスを袋に一杯頂いて、なんとなく幸せな気分になった。
次回へ続く・・・
本当に、進まないじらすなぁ~⤴