「楽しく暮らしたい、幸福に生きたい。」これは万人の希望であります。
それが出来たでしょうか。きっと出来るというはっきりとした望みが、もてるでしょうか。
我が国はかつては君子国だと、いばった時代もありました。それが一度戦争にまけて後の乱れようはどうでしょう。みっともなさは目もあてられません。やみは半ば公然と行われ、少々の罪悪にはびくびくしなくなりました。ドロボウなど、だれも怪しまなくなりました。うその報告が政治のもとになり、こしらえた申告が経済のめやすになっているのではないでしょうか。どこを足場にして国が立ち、何によってまことの社会がうまれましょう。
民族が一度うそつきの味を知り、ドロボウのくせがつけば、正義を守るとか、勤労をたっとぶとか、そうした正しい人はなくなって、アヘン中毒にかかった人のように、次第に深みに落ちて、自滅の道をたどるほかありますまい。わが国は今、こうした衰亡の道を、非常な勢いで下っているのではないでしょうか。
こんな時、やれ「道義を守れ」などとさけんだとして、だれが耳をかたむけましょう。「正直者が馬鹿を見る、道徳を守ったところで、幸福になれる見込みはない」と皆思っているからです。
つづく・・・