夫婦対鏡②
これまでは、妻は夫を改めさせようとし、夫は妻をやかましく言った。それが大まちがいであった。夫婦は互いに向かいあった反射鏡である。
夫が親愛の情にもえてやさしくすれば、妻は尊敬信頼して、世の中に夫より外に男性はないと、ただ一途に夫にたよる。この時夫は又、世に妻より外によき女性はないと、愛情をかたむける。そして明朗愛和、常に春のような、なごやかな家庭がつくられる。反対に夫がいばりすぎ、封建思想をふりかざすと、妻は小さくなって、内にこもって亀のように強情になる。妻がでしゃばり高ぶってやってのけると、夫は猫のようによわよわしく、ゆうじゅうふだんになり、どこに行っても馬鹿にされる。
互いに照らす一対の反射鏡、見事によくそろった夫婦が、どこにもここにも百面相を展開している。夫婦が互いに相手を直したいと思うのは逆さである。ただ、自分をみがけばよい。己を正せばよい。その時は、相手は必ず自然に改まる。夫婦は、いつも向かいあった。いつも向かいあった一組の鏡である。