破約失福①
「きめごと」というのは、大は天体の運行、四季、昼夜のめぐり、小は火、水、電気などについてのことなど、これまで学者が研究し、発見したすべての法則。それは、はずれるとすぐけがをする、損をする。夜は燈がないと仕事ができぬ。雨の日に傘がないとぬれる・・・。
火はやけどをするし、電気はビリリと来る。こうした自然の約束は、知る限りは必ず守る。守らぬと身を亡ぼし、命を失う。
人のきめた約束はどうであろうか。いかめしい手つづきできめた法律、あるいは人がよりあって定めた、いろいろの規約、これは人のきめたものだから、守る守らぬは、そんなに厳密なものではない。時によると、うまくのがれれば得をするといったふうに、人のきめごとは、あまく見ている。これは大変な誤りである。法律、規約も、人が何人か集まって、同じ目的で仕事をし、生きて行く為には、なければならぬきめごとである。だから、破れは皆が困り不幸になるということは分かる。が、これを破ったからとて、知れねばそれだけ得をすると考えるのが、低級な間違った常識である。たとえば、さぎ、どろぼうが、働きもせずに、もうけてよかったと思うようなものである。ことに、いわゆるやみで儲けた、と得意になっているようなものである。