そんな時、僕の父親は漁師なので、ある時父親が僕に言ったのです。「博久!海に行くぞ!従業員を食わせなきゃいかん!」そう言ったのです。ウチの父親は太平洋漁師内では名人として有名人らしく伝説の男だったんです。それでももう70歳と若いようにはいかないと、船は有給設備で海に浮かばせていたのですが、父親が腰を上げたのです。僕は今までも船に乗ったことはあるのですが、船酔いが酷く避けていましたが今度ばっかりはそんなことは言ってはおられず、酔い止め薬を大量に飲んで親子船に望んだのです。そこから地獄の日々の始まりです。片道8時間、小笠原諸島が漁場でマグロやカツオを狙っていきます。双眼鏡で水平線の向こうの海鳥を探します。海鳥がいるところに鰯がいます。その鰯を狙って海鳥は集まるのですが同時に海の底からも、その鰯を狙ってマグロやカツオが集まってきます。「海鳥発見!おやじー鳥おったぞー!」鳥の群れを見つけるとその場所にエンジン全開まっしぐら。(なぶら)発見と同時に戦争の始まりです。僕なんか素人だから上手く釣り上げられないし、かかったハリも上手に外せず、糸は絡んでしまいテンヤワンヤの中父親の怒鳴り声!「このバカー!」「遊びじゃねーぞ!」「カツオ落とすならお前が死ねー」なんて言われ続けて2時間ぐらいで1トンぐらい釣り上げるのです。春先だと@1500/㎏捕獲するので一航海150万ぐらいになります。漁に行くたび罵声を浴びせられ本当に漁に行くのが嫌だったのだけど、小笠原諸島までいくと朝方、そう太陽の姿が見えなくそれであたりが白々明るくなってくる時間、マジックアワーって言うですが、海の色と空の色が一緒になり水平線の堺が無くなるのです。宇宙の空間、球体にいるような感覚なのです。そこに父親と2人、一生懸命魚を探している。あのへんまで行くとクジラやイルカとちょくちょく遭遇するのです。そのマジックアワーの環境でシャチの親子が仲良く目の前を横切るのです。まるで宙に浮いているかの如く、まさに神秘!としか言いようがなく多少嫌なことがあっても忘れてしまう、凄い環境に携わりました。と思っているのも束の間「食ったあー!」父親の雄たけびから、神秘から現実に返ってカツオとの格闘です。
次回へ続く・・・