万物生々②
しかしこうしたことは、金銭を大切にするほんの一面で、本当に大切にすることは、むだに使わぬことであり、さらに金銭を生かして使うことであって、これがその頂上である。
物は、人と同じように生きている。人が徳の高い人のものに集まるように、物もまた少しでもよく働かしてくれる人のところに集まる。物をほんとうに働かすとは、使う時思いきってこれを使う事である。ケチケチするのは、金銭を生かす事にはならぬ。大たんに、よろこんで、すぐにこれを出す。これが生かすこと、金を働かすことである。それで我欲の人は金銭を自分一人のために、自分の勝手のためにのみ使いたいという心であるから、活動したい子供たちを、親の勝手にしばりつけておくようなものである。
実は、金銭はその人の努力に正比例し、欲心に反比例して集まってくる。財貨は、喜んで働く人に自然にめぐまれる。欲心のあるだけ差引される。
大富豪は、実は無欲至誠の人でなければ行けない境地である。
世には、報酬を要求し、金銭を請求するのを賤しい事のように思う人がある。取るべき金を取り、請求すべき金銭を妥協なく要求することは、何らはずべきことでないばかりでなく、かえって、生活にはっきりと筋道を立てる所以である。