十三 本を忘れず、末を乱さず

反始慎終②

そうした中でも、最も大切な、わが命の根元は、両親である。この事に思い至れば、親を尊敬し、大切にし、日夜孝養をつくすのは、親がえらいからではない。世の中にただ一人の私の親であるからである。私の命の根元であり、むしろ私自身の命である親だからである。

ちちのみの父ににたりと人が言ひし我まゆの毛も白くなりにき。(僧 愚庵)

年をとると、年々父に似てくる、母に似てくる。たべもの、飲みもの、顔形、くせ、考え方まで。なつかしの父母よ。

親が病気するのは子が不幸だからである。現にこれに気がついて、その子が行いを改めたため、親の不治の病が直った体験は、『新世』誌上に次々に発表せられる通りである。

ほんとうに、父を敬し、母を愛する、純情の子でなければ、世に残るような大業をなし遂げることはできない。いや世の常のことでも、親を大切にせぬような子は、何一つ満足にはできない。

親をとおして己の生命の根元にさかのぼれば、そこに神仏にかえる。敬神崇祖、即宗教に入ることが、真の人となるゆえんは、ここにある。

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